今年の3月で退職した上司(女)がふと訪ねてきてくれた。「あなたの顔が見たくなって」と。
その一言に今日一日救われる思いだった。
「あなたっていつ見ても元気ね!体調崩して休んだとこ見たことないもの」と。
元気に見られているということが嬉しかった。
その上司は自分も病気を抱えつつ、自分の母親の介護のために定年前に退職した。ま、最近悩み多き毎日を送っているのだが、そんなの皆そうだし、私だけじゃない、って気持ちになった。
再び、『死の棘日記』を読み始めている。島尾敏雄が今も生きていたら、「ブログ」やるんだろうか。
「今日から蚊帳つるのやめたー」とか。
子供達(伸三とマヤ)の涙ぐましいまでの、(気がふれた)母親への気の使い方が一番読んでいて辛い。「死の棘」日記死の棘 (新潮文庫)
夫婦喧嘩のことを「カテイノジジョウ」と言い、「カテイノジジョウハヤメロ!」と叫ぶ伸三。
でも『死の棘』は不思議な小説だ。こんなに辛くて隠々滅々としていて、救いようがない話なのに、読んでいると不思議と元気になってくるのだ。それは多分、島尾敏雄がこの現実から目をそらさず、自分と妻、家族のことを少しの美化も卑下もなく書いていくという姿勢がずっと一貫しているからかな、と思う。そして、この人(ミホ)を絶対に死なせてはならない、という気持ちの強さに、読んでいるこちら側が励まされるのかもしれない。