ヤキソバ

T氏の故里である静岡に帰省。彼には、帰ると必ず寄る(寄らなければならない)店がある。今回も、「やっぱ、いかなきゃだめだよなー」と言いつつ、同級生で実家の自転車屋を継いだN君を誘ってその店に行った。
そこは、通っていた高校に程近い食堂で、おばさん二人姉妹がやっている。
中華そば、ヤキソバ、冷やし中華、あんみつがそこの全メニュー。
店に入ったが最後、おばさんのマシンガントークが炸裂。だれそれがいつ来てくれた、何年前に卒業した○君が出世して偉くなった、野球部の×君が今プロ野球でどうした、延々と話が続くのだ。その話の腰を折らないように注文し、話を聞きつつ食べ、食後もお茶など出されてそのまま話に付き合い、別のお客が入ったところで、タイミングよく出なければならない。
以前、T氏は数年ぶりにその店に行き、自作の映画(自主)のポスターを貼ってもらおうとお願いに行ったところ、「誰?あんた」的な扱いを受け、だいぶ憤慨して帰ってきたのだが、当時の同級生に話を聞くと、こまめに顔を出さないと、そこのおばさんはものすごく機嫌が悪くなるそうなのだ。
今回は、今年のお正月以来だったので、まだご機嫌だった。先客も近くの高校の卒業生らしく、「あのね、この方は、映画撮ってる人なのよー!」と紹介され、その後話のふりは我々にシフトチェンジ。同じ高校の卒業生であるしriあがり寿が「Hanako」でこの店を紹介してくれたエッセイなどを読ましてくれて、延々あんたの同級生のだれそれがどうしたこうしたという話を聞かされる。自転車屋のN君などは、以前行った際、亡くなったおじいちゃんのジャンパーをもらい、それを着ていかないと怒られるので、わざわざ店の前でそのジャンパーに着替えて入るそうだ。
こんなに客が気を使う店も珍しいと思うのだが、T氏に言わせると、何か麻薬のようなものがこの店にはあるのだそうだ。まず、ここの店のヤキソバがかなり不思議なヤキソバで、カリカリだが決して固焼きそばではなく、入っているチャーシューがいやに分厚く、どこにもない味なのだ。美味いかまずいかと聞かれれば、即答はできないが、しばらく食べないと無性に食べたくなる味なのだそうだ。そしてあのおばさんのマシンガントーク。じっと耐えつつ聞いていると、なんだか、「いつかこのおばさんの話題にのぼってやるぞ」みたいな闘志がわくのだ。このおばさんの話題にのぼるためには、まず足繁く店に通い大金を投資し、そしてやはり偉くならないといけないのだ。(ちなみにヤキソバは400円)
最近の出世頭は、やはりしriあがり寿とTBSのディレクターになった人らしい。あと、T氏の同級生では司法書士のなんとか連合会長になったOさんあたり。
T氏が話題にのぼる日はいつになるのか。