耳に残るうた

別に好きでもない曲が頭から離れない、ということがよくある。
高校生の頃、友人にユーミンのアルバムをテープに録音してもらったことがある。
最後の曲が終った後、いきなりそれは始まった。
そのテープに以前、友人が入れていたのらしい「嶋大輔」が消し忘れて入っていたのである。「♪オイラの自慢のマシンは〜」で始まる何というタイトルかわからない歌が、ユーミンの最後の静かな曲が消えるように終ると、いきなり、オイラの〜 と始まるのである。しばらくの間、私は、そのテープを聴くたびに、ユーミンの曲が終るや否や急いでストップボタンを押していた。でも4、5回に1回はボヤボヤしていて、いきなり、オイラのぉ〜と流れるのである。
そのうち、いきなり始まる「嶋大輔」も含めて、そのテープを時々かけるようになった。その曲の単調さ、歌詞のばかばかしさは、妙に耳に残り、何かの拍子にその歌が頭に浮かぶとグルグルと駆け巡った。そして無意識に「オイラの〜」と口ずさんでしまっているのである。「〜負けてたまるかぃ〜」とか「湘南ドライブしようか〜な〜ん〜て〜」とかいう歌詞もあった。
嶋大輔。こんなことでもないと、一生聴くこともなかっただろう。
今では、そのテープの中のユーミンの曲は全て忘れてしまい、「嶋大輔」の曲しか覚えていない。