落ち込んだ時、やさぐれた気分の時、手にするのは決まってこの数冊の本だ。
・『忘れられた日本人』宮本常一忘れられた日本人 (岩波文庫)
土佐源氏」土佐の盲目の乞食の艶話。誰か、例えば新国劇島田正吾さんあたりが、一人芝居で演じてくれたら面白いのに、と思っていたら、亡くなってしまった。
・『貧困旅行記つげ義春
伊豆松崎町の「山光荘」。卒倒しそうなほど美しい女主人、というのを見に、新婚旅行にこの宿を選んでしまった。本当にひっくり返りそうなほど美しいおばあさんだった。
・『君について行こう』向井万起男君について行こう(上) (講談社+α文庫)
奥さんのチアキちゃんだけでなく、チアキちゃんの両親、兄弟、宇宙飛行士仲間、その家族、そして歌舞伎町であやしいチラシを配るオアニイサンにも優しい眼差しが向けられている本。
・『高野聖泉鏡花高野聖 (角川文庫)
「出家のいふことでも、教だの、戒だの、説法とばかりは限らぬ、若いの、聞かつしやい、と言つて語り出した。」この一行を読むだけで気持ちが晴れ晴れしてくる。

ここのところ、この数冊をくり返しくり返し読んでいる。読んでいると、不思議と元気になってくるのだ。何故だろう、とずっと思っていたのだが、皆、人に向ける視線がとても優しいのだ。こんな風に人を表現してくれる人に出会いたい。そして自分もこんな風に人を見れるようになりたいと思っている。