遙かなる山の呼び声 [DVD]昨日、久しぶりに「遥かなる山の呼び声」を観た。何度観ても良い映画だ。誰かが、倍賞姉妹は日本の宝だ、と言っていたが、本当にそう思う。そして高倉健。結局彼は「奥さん」への愛情を言葉で表すことはない。「ここでの2ヶ月間のことは一生忘れません」という以外に。
しかし、高倉健倍賞千恵子ハナ肇も、ついでに吉岡秀隆も、こんな人もういないだろうなぁ、という思いがむくむくと湧きあがった。だいたい、いまどきの後家さんなら、ハナ肇に「な、いいだろ?」と言われたら、すぐヨロとなりそうだ。高倉健倍賞千恵子だって、2ヶ月も一緒に暮らせば、あっという間にねんごろになりそうだ。そこを、ならないんだなーこれが。貞操観念みたいなものが、まだあった頃の話だ。今ないもん。全然。だから、こんなコンセプトの映画はもう作れないんじゃないか、と思った。
山田洋次の映画は、倉本聡のドラマと同様、そこに「いる」人々の描き方がうまい。そこに何年も暮らしている匂いみたいなものがにじみ出ている。でも、これは、本当にそこに「いる」人々が演じても出せない。全くフィクションの世界だ。だから、倍賞千恵子の義兄役で出ている人が、どうやら北海道の地元の人のようで、一人だけ妙に演技がヘタクソで、そこだけ興醒めした。素人といえば、獣医役の畑正憲は良かった。泥酔状態で牛の手術をし、夜明けと共に、眠そうに馬に乗って帰るところなんか、とてもよかった。
一箇所、アドリブなのか、吉岡秀隆を馬に乗せた高倉健が、「どうだ!楽しいか!2500円払え!」というのが、おかしかった。吉岡が「え〜、高い…」と困惑しつつ呟くのである。